WILD LIFE ワイルドライフ

7月5日(金)YEBISU GARDEN CINEMA、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー

著名人からのコメント

Introduction

『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』『プリズナーズ』『スイス・アーミーマン』など、独特のナイーヴな演技で、ポール・トーマス・アンダーソン、ドゥニ・ヴィルヌーヴら鬼才とのコラボレーションを重ねてきた演技派スター、ポール・ダノ。そんなカリスマ俳優が満を持して鮮烈な監督デビューを飾った。『ルビー・スパークス』で共演したパートナー、ゾーイ・カザンと共同で脚本・製作も担当し、サンダンス映画祭やカンヌ映画祭で絶賛を浴びた。
「いつの日か映画を作る時は、きっと、家族についての映画を撮るだろうと思っていた」というダノが、原作として選んだのはピューリッァー賞作家リチャード・フォードが1990年に発表した「WILDLIFE」。フォードの小説は、寂獏とした読後感で世界中の読者を魅了しており、「モントリオールの恋人」(村上春樹訳)や「ロック・スプリングス」(青山南訳)などの短編も日本で紹介されている。

物語の舞台は、1960年代、カナダとの国境にほど近いモンタナ州の田舎町。14歳のジョーは、ゴルフ場で働く父ジェリーと,家庭を守る母ジャネットの1人息子だ。新天地での生活がようやく軌道に乗り、睦まじい夫婦の姿を息子が安堵の面持ちで眺めていたのもつかの間、ジェリーが職場から解雇されてしまう。さらに、ジェリーは命の危険も顧みず、山火事を食い止める出稼ぎ仕事に旅立ってゆく。残されたジャネットとジョーは働くことを余儀なくされ、母はスイミングプール、息子は写真館での職を見つけるが、生活が安定するはずもない。やがてジョーは、優しかった母が不安と孤独にさいなまれ、生きるためにもがく姿を目の当たりにすることになる。

長回し撮影を多用して、幸せだった家族が壊れ、バラバラになっていく姿をジョーの目線から静かに深く映し出してゆく『ワイルドライフ』。母との関係、父との関係、そして夫婦の関係は、もうもとに戻ることはないとわかっていても、それでもジョーの胸には家族が紡いだ愛情が今も残る。変わりゆく家族の形に戸惑いながらも、父と母の姿を見て、ジョーもまた大人になっていく。彼が両親を写真館に誘う、実に美しく、切ないラストシーンでは、彼のまっすぐな視線に観客は彼の未来と生命力を信じずにはいられなくなるだろう。

互いに愛し合いながら、なす術もなく壊れてゆく夫婦。悲嘆と狂おしいジャネットの思いを圧巻の演技で見せるのは、キャリー・マリガン。米アカデミー賞にノミネートされた『17歳の肖像』や、『わたしを離さないで』、『ドライヴ』、『未来を花束にして』で観客を魅了してきた儚げな雰囲気を封印して、1960年代のアメリカ北西部の主婦が抱えるジレンマを見事に浮かび上げてみせた。

相手役ジェリーには、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督作『プリズナーズ』でポール・ダノと共演しているジェイク・ギレンホール。アン・リー監督作『ブロークバック・マウンテン』ではアカデミー賞にノミネート。その他、『ゾディアック』でデイヴィッド・フィンチャー、『ノクターナル・アニマルズ』でトム・フォードなど話題の監督と組んでいる若き名優は『ナイトクローラー』では主演だけでなく製作者としての道も歩みはじめている。

そして14歳の主人公ジョーの哀しみと動揺をもの言わぬ演技で表現してみせるのは、8歳で故郷オーストラリアのCMでキャリアをスタートさせたエド・オクセンボールド。これまでには、M・ナイト・シャマラン監督作『ヴィジット』で恐怖におののく主人公を演じている。

ポール・ダノ、キャリー・マリガン、ジェイク・ギレンホール。良質な作品を数多く世に送り出してきた30代の若き才能たちが作り上げた、普遍的な家族の物語。 そして、監督ポール・ダノ自身の心情が投影された14歳の少年ジョーの成長物語でもある。ダノの繊細さと優しさが詰まった『ワイルドライフ』は、観客ひとりひとりの記憶をそっと呼び起こし、温かい余韻をもたらすに違いない。

イントロダクション

Director's Message

長年、映画を作りたいと思っていました。
そして、いつの日か映画を作る時は、きっと、家族についての映画を撮るだろうと思っていました。
私が育った家庭には愛情が溢れていましたが、大きな波風が立つこともありました。
リチャード・フォードの「WILDLIFE」を読んだ時、その二面性に不意を突かれ、思わず心の窓を開かれたような感覚でした。この小説を何度も読み直し、動揺し、不安になり、そしてまたワクワクしました。
それから1年余り、私は小説「WILDLIFE」について思いを巡らしながら過ごしていました。
親とは何だろう?という疑問に囚われて、そこから何か答えを見つけたいと自問自答する日々でした。
そしてある日、私の初めての映画のラストシーンが頭の中に明確にイメージできました。
この最後の映像に手ごたえを感じ、映画化に向けて歩み始めました。

そこで私は、リチャード・フォードにメールを送り、この本の映画化権を確保しました。その時のフォードのメールにあった言葉は、私にとって最高の贈り物となりました。
彼はこう書いています。
「私の本に興味をもってくださり、とても嬉しいです。しかし、私は次のことも言わねばなりません。それがあなたを励ます言葉になることを願いながら。つまり、私の本は私の本。あなたが作ろうとしている映画は、あなたの映画だということです。私の小説に対するあなたの映画製作者としてのリスペクトは強く感じており、まったく心配していません。あなた自身の価値観、方法、目標を構築してください。そして、この小説は忘れてください。そうすれば、妨げになることもない。それが映画化に向けて、一番良い方法だと思います。」

彼の言葉が、パートナーであるゾーイ・カザンとともに脚本を書き始める私に大きな勇気を与えてくれました。私は、誠実で分かち合えるものを作りたいと思っていました。必要な時以外は、カメラを動かしたくなかったです。自分自身と素材に誠実でありたいと思ったのです。

脚本を書く準備をしていた2013年の私の日記からの抜粋です。

“この映画は心で感じる映画にしたい。ジョーを通して、自分の感情を掘り下げたい。家族と親について問いかけたい。希望を失うこと、バラバラになっていく家族の姿を見つめて、最後に、生き残ることを描きたい。たとえ最悪のことが起こったとしても、人間は生き残ることができるということを探求したい。私たちはそれでも家族でいることができる。決して前と同じではないだろう。でも私たちには愛情がある。そして私たちには生きるための生命力があるのだ。”

キャスティングはまずジャネット役から始めました。共同脚本のゾーイは何年も前にキャリー・マリガンと一緒に仕事をしたことがあって彼女のことを知っていました。素晴らしい女優だから、彼女に演じてもらえて光栄でした。それに彼女がジェイクと知り合いなのを知っていたので、このふたりのコンビネーションはうまくいくと思いました。ジョー役のエド・オクセンボールドを見つけることができたのは、とてもラッキーでした。彼はオーストラリアの俳優で、とても賢い。出会った時はまだ15歳だったけれど、撮影現場ではジェイクとキャリーに囲まれても一歩も引けを取らない存在感がありました。

『ワイルドライフ』は、両親が変化し、夫婦が崩壊していく姿を見つめる息子の目を通して描かれていきます。両親の関係性は崩れていきますが、彼は成長しなくてはならない。母親、父親、そして息子。この3人全員が大人になっていく物語です。苦悩し、傷つき、幻滅するけれど、愛に導かれた映画でもあります。この映画を皆さんと分かち合える時がやってきました。受け入れることと手放すことの意味を問いかけながら、主人公ジョーと同じように、ある家族の肖像をゆっくりと見つめていただきたいです。

ポール・ダノ

監督/共同脚本/製作:ポール・ダノ

1984年、アメリカ・ニューヨーク州出身。17歳の時に出演した『L.I.E(原題)』(01)で映画デビュー、インディペンデット・スピリット賞最優秀デビュー演技賞を受賞。『リトル・ミス・サンシャイン』(06)で注目を浴び、2007年、アカデミー賞作品賞にノミネートされた、ポール・トーマス・アンダーソン監督『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』で、英国アカデミー賞助演男優賞にノミネート。15年『ラブ&マーシー 終わらないメロディー』ではゴッサム・インディペンデント映画賞の最優秀男優賞を受賞した。その他、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督『プリズナーズ』(13)、アカデミー賞作品賞に輝いたスティーブ・マックィーン監督『それでも夜は明ける』(13)、パオロ・ソレンティーノ監督『グランドフィナーレ』(15)、ポン・ジュノ監督のNetflixオリジナル映画『オクジャ/okja』など名だたる監督たちの作品に出演している。また『ルビー・スパークス』(12)では主演&製作を務め、出演&脚本のゾーイ・カザンとはプライベートでもパートナーで、2018年に第一子が誕生した。ゾーイ・カザンは本作『ワイルドライフ』でもダノと共同脚本を務める。

Cast & Staff

  • 1985年、イギリス・ロンドン出身。『17歳の肖像』(09)でアカデミー賞主演女優賞、ゴールデン・グローブ賞、全米映画俳優組合賞にノミネートされ、英国アカデミー(BAFTA)賞最優秀主演女優賞に輝く。『未来を花束にして』(15)で、英国インディペンデント映画賞最優秀女優賞にノミネート。その他、『ウォール・ストリート』(10)、『わたしを離さないで』(10)、『ドライヴ』(11)、『SHAME −シェイム−』(11)、『華麗なるギャツビー』(12)、『インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌』(13)、『遥か群衆を離れて』(未/15)など、話題作への出演が続く若手実力派女優。

  • 1980年、アメリカ、カリフォルニア州出身。『シティ・スリッカーズ』(92)で映画デビュー。『ブロークバック・マウンテン』(06)でアカデミー賞助演男優賞にノミネート。主演作『ナイトクローラー』(15)では製作も務め、ゴールデングローブ賞、英国アカデミー賞、放送映画批評家協会賞など多数ノミネートされた。近年の主な出演作は『ジャーヘッド』(05)、『ゾディアック』(07)、『マイ・ブラザー』(09)、『ミッション:8ミニッツ』(11)、『エンド・オブ・ウォッチ』(12)、『プリズナーズ』(14)、『複製された男』(14)、『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』(15)、『ノクターナル・アニマルズ』(16)、『ライフ』(17)、『オクジャ/okja』(17)、『ゴールデン・リバー』(18)など。インディペンデント作品とスタジオ作品の両方で、様々な優れた監督からオファーが絶えない俳優の一人。また、映画製作会社ナイン・ストーリーズを設立し、プロデューサーとしての道も歩み始めている。

  • 2001年、オーストラリア・メルボルン出身。10歳の時に、短編『JULIAN』(12)の主人公を演じ、オーストラリア映画テレビ芸術アカデミー(AACTA)賞最優秀ヤング・アクター賞にノミネートされ、AACTA賞最優秀短編映画賞とベルリン映画祭クリスタル・ベア賞を受賞した。『ペーパー・プレーンズ』(14)ではオーストラリア映画批評家協会(FCCA)賞ヤング・アクター部門最優秀演技賞を受賞。『アレクサンダーの、ヒドクて、ヒサンで、サイテー、サイアクな日』(14・未)でアメリカ映画界に進出。M・ナイト・シャマラン監督『ヴィジット』(15)では主人公の一人タイラーを演じた。

  • これまでに様々な作品に出演している名バイプレイヤー。主な映画作品は、『パブリック・エネミーズ』(09)、『欲望のバージニア』(12)、『コンプライアンス 服従の心理』(12)、『それでも夜は明ける』(13)、『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』(14)『ラブ&マーシー 終わらないメロディー』(15)『ラビング 愛という名前のふたり』(16)、『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』(17)、『モリーズ・ゲーム』(17)など。TVシリーズ「ナイト・オブ・キリング 失われた記憶」(16)でエミー賞に、アーサー・ミラーの戯曲「るつぼ」(16)でヘイル牧師を演じ、トニー賞にノミネートされた。

  • 共同脚本/製作 ゾーイ・カザン

    1983年、アメリカ・カリフォルニア州出身。映画/TV/舞台で活躍する俳優であり、劇作家、脚本家でもある。祖父は映画監督のエリア・カザン。父親のニコラス・カザンと母親のロビン・スウィコードはともに脚本家。名門イェール大学で演劇を専攻。2006年、オフブロードウェイのリバイバル公演「ミス・ブロディの青春」で本格的な女優デビューを果たし、ブロードウェイの舞台「愛しのシバよ帰れ」、「スポケーンの左手」の世界初演、自身がドラマデスク賞にノミネートされたチェーホフ作「かもめの」のリバイバル公演など、舞台女優としても活躍。2008年、クラランス・ダーウェント賞の“最も有望な女優”賞を受賞した。主な映画出演作は『レボリューショナリー・ロード 燃え尽きるまで』(08)、『50歳の恋愛白書』(09)、『恋するベーカリー』(09)、『ルビー・スパークス』(12)、『ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ』(17)など。

  • 音楽 デヴィッド・ラング

    1957年、ロサンゼルス生まれの現代音楽家。 NYミニマル第三世代を代表する音楽集団バング・オン・ア・カンの創立者の一人。 2008年、アメリカで最も権威ある賞であるピュリッツァー賞(作曲部門)を受賞。 ポール・ダノ出演、パオロ・ソレンティーノ監督『グランドフィナーレ』(15)で、世界の主要映画祭の音楽賞を席巻、アカデミー賞主題歌賞にノミネートされた。

  • 撮影 ディエゴ・ガルシア

    メキシコの映画学校を卒業し、マーク・ジャクソン監督『WITHOUT』(11)で撮影監督デビュー。2012年、ユレネ・オライゾラ監督『FOGO』を撮影し、国際的な脚光を浴びた。『光りの墓』(15)のアピチャッポン・ウィーラセタクン、『NEON BULL』(15)のガブリエル・マスカロなど、優れた監督たちと仕事をしている。最近は、『闇のあとの光』(12)のカルロス・レイガダス監督作『Our Time』(18)の撮影を担当している。

  • 編集 マシュー・ハンナム

    カナダ出身。ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督『複製された男』(13)では、カナディアン・スクリーン・アワード最優秀編集賞を含み、国際的な19もの賞を獲得している。ポール・ダノ出演作品『スイス・アーミー・マン』(16)も担当。その他の作品は、トレイ・エドワード・シュルツ監督『イット・カムズ・アット・ナイト』(17)、ブラディ・コーベット監督『VOX LUX』(18/出演:ナタリー・ポートマン、ジュード・ロウ)など。

  • 美術 アキン・マッケンジー

    ニューヨークを拠点に活動するプロダクションデザイナー。主な作品は、ブラッドフォード・ヤング監督の短編『Black America Again』(16)、ジェイ・Zの楽曲「スマイル」のミュージックビデオ『Jay-Z: Smile』(17/監督:マイルズ・ジェイ)、エリオット・レスター監督『アフターマス』(17)など。